このブログでも取り扱っており、最近よく日本でも耳にすることが多くなったプラントベース(Plant-based)とは、いったいなんでしょうか?
用語としてのプラントベース
プラントベース(Plant-based)とは、植物由来のことです。
アメリカには、たくさんのPlant-based食品が販売されています。肉の代わりに、大豆製品(豆腐、テンペなど)やセイタン(グルテン)を、卵の代わりにスターチやフレックスシード、乳製品の代わりにカシューナッツやココナッツオイルを使ったバター、ヨーグルト、サワークリーム、チーズなど。
食生活におけるプラントベース

一般的にプラントベース食生活というと、植物由来の食品を中心とした食事法全般を指し、健康のために植物性のものを積極的にとる、という意味合いが強いです。動物性食品を必ずしも否定しておらず、とるかとらないかは本人次第です。ただ、これも人によって、また立場によって解釈が違い、プラントベース食生活=動物性食品はNG、という極端な人もいる一方で、プラントベース料理を作ったり食品を購入しつつも、実際は多少動物性食品もまぜて摂取している、俗にいうTransitional(移行期間的な)なフレキシタリアンのような食スタイルの人達が多いように見受けられます。
現に私も、普段から9割以上プラントベースですが、残りは友人と外食を楽しめるように動物性OKにして、うまくバランスをとっています。
大事なのは、何を目的にプラントベース食生活をご自分やご家族に取り入れるのか、というところだと思います。美容や健康促進のため?それともガンや糖尿病の治療のため?それで動物性食品との付き合い方が異なってきます。
ほかの食事法との違い
でもほかにも似たような食事法や食事制限の単語を聞きますよね?なにがちがうのでしょうか?
ローフード、ヴィ―ガン、ベジタリアン、PBWF、WFPBなどなど。
実は、これらはプラントベース食生活をさらに細分化した流派です。プラントベースはそれらを大きく包み込む食生活となります。
そう、プラントベースはシンプルなのです!(笑)
念のため、混乱しがちな食事法のリストを翻訳しました。
Vegan (ヴィ―ガン) | プラントベース食品”のみ”を食べる。肉、魚、乳製品、卵、ゼラチン、はちみつもダメ。(一般的なプラントベースでは、はちみつはOK)。通常、動物保護や環境保護が本質的にあるため、動物性のものを身に着けないという、ライフスタイル全体に適用されることが多い。 |
Raw foods (ローフード) | 118F (48C)以下で調理する技術を使った食品。酵素の働きを保ちながら、発酵や乾燥させることができる。 |
Living foods (リビングフード) | 治療食の一環で、発芽したもの、発酵を多く摂取する。これらの生理活性効果のある食品は生きた微生物を含んでおり、ローフードと親和性がある。 |
Plant-based Paleo(プラントベースパレオ) | ナッツ、シード、良質な脂肪、低糖質の野菜、海藻、低糖質のフルーツを食べる。穀物と乾燥豆は摂取しない。 |
Sodium Free (無塩) | 治療食の一環で、塩分を加えず、加工した食材もほとんど使わない。代わりに、ハーブ、スパイス、酢、などで風味を増す。プラントベースと組み合わせる。 |
No-oil, Whole food, Plant-based 油なし, 未精製食品, プラントベース | 栄養価の高い緑黄色野菜に重きを置いた食品を選択する、いわゆるWFPB/PBWF(China Study/Wholeで著名なCampbell先生の栄養学の授業ではWFPBと言う。)すべての植物由来の食品を含むが、植物から抽出した油、糖分、プロテインは使わず、植物全体を丸ごと摂取する。塩も控える。例)アボカドオイルではなくアボカド、デーツシュガーではなくデーツ、大豆プロテインではなく大豆を摂取するなど。 |
No-oil, Starch based (油なし、でんぷんベース) | カロリーの低い、ポテト、カボチャ、根菜などでんぷんを中心とした食のライフスタイル。脂質の高いナッツ、シード、アボカドは避けるが、穀物、豆、その他植物由来の食べ物は食べる。 |
Macrobiotic (マクロビ) | そもそもは慢性の病気の患者をいやすための食生活。加工食品を避け、消化に良く栄養が吸収されやすい温かく調理された穀物、野菜、海藻、発酵食品を食べる。ナス科の食品、例えばジャガイモ、トマト、チリ、なすを避けることが多い。 |
Gluten-Free(グルテンフリー) | 未消化のグルテンが体の中で炎症やアレルギーのような症状を起こすため、グルテンを制限した食生活のこと。プラントベースとグルテンフリー、両方を選択すると、タンパク質と炭水化物を摂取するための食品選択が狭まってしまう。(グルテン=タンパク質源なので) |
Vegetarian (べジタリアン) | 実はベジタリアンには複数の種類がある。共通しているのは、肉を食べないこと。(でもいずれにしても動物性食品が入るので、これは正式にはプラントベース食生活には含まれない。) Lacto (ラクト)-乳製品は食べるが、肉、魚介、卵を食べない。 Lacto-Ovo (ラクトオボ)- 乳製品、卵、はちみつは食べるが、肉や魚介を避ける。 Ovo (オボ) - 卵は食べるが、肉、魚介、乳製品を避ける。 Pescatarian (ペスカタリアン) - 肉だけさける。 |
さらに各個人の体質や悩みによって、複数組み合わせで使われることも多いです。
例えば、グルテンフリー&無塩&油なし、PBWF&無塩とか。
プラントベース食生活、という場合は、こまごました流派の規則にとらわれなくてよいところがシンプルで私は取り組みやすくて気に入っています。各自の病気、アレルギーや好き嫌いに応じて、栄養を考えながら食材を組み合わせればよいだけなので。
ちなみに、WFPB, PBWFを赤くしている理由は、コーネル大学のプラントベース栄養学で学んだ食事法で、私が現在徐々に取り入れ始めているからです。
プラントベースを実際の生活に取り入れるには?

プラントベース料理の食材は、野菜、果物、豆(ひよこ豆、大豆、白豆、黒豆など)、穀物(キヌア、玄米など)、ナッツ・シード、海藻、栄養酵母、スパイス、ハーブです。
動物性からのうまみ(イノシン酸など)と栄養がとれないので、スパイスやハーブ、素材を組み合わせてうまみと栄養を補います。素材自体のうまみと栄養が重要であるため、精製塩は避けて海塩や岩塩を、甘味料も白砂糖を避けて黒糖、メープルシロップ、アガベシロップ、玄米シロップ、ドライフルーツを水に戻してペーストにしたもの、などを使い、できる限り全粒で、たくさんの種類の食品を組み合わせる工夫が必要になります。
日本だと、精進料理が代表ではないでしょうか?ただし、精進料理の場合は、香りの強い五葷(にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょう)は使われないところが、一般的な「プラントベース」よりも選択肢が狭まるところです。もともと歴史的、宗教的に植物由来の食品を中心にしている日本人には比較的取り組みやすい食生活と思われます。
それにしてもよく考えるとなんだかいろいろ面倒に聞こえる方もいらっしゃると思います。
実際バターやマヨネーズ、ヨーグルト、サワークリームなど動物性ですから、食材以外でもプラントベースに統一するのは意外と大変ですし、そもそも入れ替えたとしても味が全く違います。しかし、そういうものか、と思えばさほど気にならなくなりますし、最初は調味料くらいは動物性が混ざっていても気にされなくてもよいかもしれません。
準備も毎回するのは大変ですが、豆や穀物は一晩漬けこんで時間のある週末にまとめて煮て冷蔵冷凍しておけば、平日手軽に取り入れることができます。自分でゆでた豆は缶詰めとは全く別物で、美味しいです!ゆで汁は栄養とうまみがたっぷりなので、だしと一緒にまぜて料理に使うと味に深みが増します。
冷凍の野菜や果物(加工品以外)もおすすめです。ピークで収穫されたものが多いですので、栄養豊富、味も缶詰に比べたらずっと生に近いです。過去学んだプラントベースのクラスすべてで同じことを習いました。
洋風の野菜ストックも、ブイヨンを作っておいて冷凍しておけば、味噌のように少しずつ取り出しながら水で薄めて使えるのでお店で買わなくてもよいです。
味付けや食材を工夫することでプラントベースだけでも美食を楽しむこともできますし、私のように9割以上、と決めてしまえば、残りは肉や魚、乳製品をたまに楽しむこともでき、生活の質を落とす心配もなく、どんどん健康になってむしろ質がどんどん上がっていきます!続けるほど魅力にはまって、自然とプラントベースの割合が増えていえるのが、本当に不思議です。
プラントベースでは栄養が不十分?
実は植物由来の食品には多くの栄養素が詰まっているんです!(以下栄養データは、Rouxbeのコースより引用)
動物性食品に比べて、植物性食品はカロリーデンシティ(カロリーの密度)が圧倒的に少ないから、量を取ることにより栄養が十分に取れるのです。だからたくさん食べて太らない!そして長生きできるっていいことではないですか?
例えばカルシウムは1日の目標1000㎎に対して
木綿豆腐: (1/2 cup) = 861 mg
枝豆: (1 cup) = 504 mg
アーモンド: ローストで無塩 (1 cup) = 370 mg
青梗菜: 千切りにして調理済み。無塩 (1 cup) = 158 mg
ヒマワリの種: トーストしたもの(1 cup) = 76 mg
ケール: 生 (1 cup) = 53 mg
芽キャベツ: 生 (1 cup) = 37 mg
ほうれん草: 生 (1 cup) = 30 mg
イチヂク: 生1個 = 22 mg
また、鉄分も一日6.5㎎目標に対して、
ゆで大豆 (1/2 cup): 4.4 mg
カボチャの種(30g): 4.2 mg
キヌア (100g): 4 mg
トマトペースト (100g): 3.9 mg
白豆 (1/2 cup): 3.9 mg
ゆでホウレンソウ(1/2 cup): 3.2 mg
プルーンジュース (200g): 3 mg
ただ、野菜から摂れる鉄分は非ヘム鉄で吸収がされにくいです。ビタミンCと一緒に取ると吸収率がよくなるので、気を付けてみてください。
たんぱく質(プロテイン)も、豆、ナッツ、シード、穀物、グルテン類、栄養酵母から十分に一日の摂取量を取得できます。
(厚生省によると、18歳以上の日本人女性 50g、男性 60gが推奨)

たんぱく質は量も大事ですが、質も大事です。たんぱく質を構成する20種のアミノ酸のうち、9つの必須アミノ酸は体内で合成されませんので食品から摂取する必要があります。さらに植物性食品の単体からすべて摂取することは難しいため、複数の食材を組み合わせて摂取する必要があります。特におすすめが、玄米かキヌアと豆!納豆と玄米、ひよこ豆カレーと玄米、豆腐ハンバーグと玄米など。あと、栄養酵母(Nutritional Yeast)は9種の必須アミノ酸を含んでいるので、料理に混ぜたりすると風味もでるのでお勧めです。
私が最近毎日摂取しているのが、インカインチパウダー(Sacha inchi)です。こちらはオメガ3も含み、大匙1杯で約9gほどのたんぱく質を摂取できる優れものです。アミノ酸のバランスもよく、味もきな粉のような香ばしい味で癖が少ないのです。スムージーに入れたり、プロテインボールに入れたり、工夫しています。
あと不足しがちなのはB12。でもこれはプラントベースに限らず、通常の食生活でも不足しがちだそうで、サプリか栄養酵母(Nutritional Yeast)で補えます。サプリメントの場合は、添加物の少ないものを選んでください♪
最後にオメガ3脂肪酸。α-リノレン酸を摂取すれば、体内でEPA, DHAに変わります。α-リノレン酸が取れる植物性の食品はフラックスシード(亜麻仁)、チアシード、クルミ、大豆、ヘンプシードなどが代表です。Flax seedsは粉末、そのままでも売られています。粉末は大匙1に対して水大匙3に溶かして卵の代わりにつなぎに使ったりします。粉末もそのままでも、スムージーに少し入れると香ばしくて美味しいです。亜麻仁油(Flax seed oil)で効率よく摂取することもできますが、非常に酸化しやすいので、小さめの遮光ボトル入り、オーガニック、コールドプレスのものを選んでください。
プラントベース食生活を取り入れての実感

プラントベース90%以上の食生活を2020年後半から続けていますが、身体面での劇的な体質改善を感じています!
詳しくははじめまして、で経緯など合わせてUpdateしていってますので、ご覧いただければ幸いです。
今回のまとめ
最初はいろいろなれないこともあると思いますし、人付き合いもあるので、プラントベースに移行するのは難しいと思う方も多いと思います。また、植物性食品にアレルギーや消化の問題があると栄養源が狭まるので、動物性をどうしても取らないと全体の栄養バランスが崩れる場合もあると思います。
プラントベース食生活の良いところは、
- 考え方がシンプル
- ヴィーガンのように100%を強いられ、我慢する必要がない。
- 美味しく健康に、環境にもやさしく、という考え方が根底に流れている。
プラントベースだけで必要な栄養を補うためには、ある程度栄養学についての知識や、料理法を知っておいたほうが、効率的に無駄なく、しかも美味しく楽しみながら結果を得ることができます。単に野菜を食べればいい、というものでもなく、バランスよくいろんな食材を組み合わせることが大切です。
プラントベースに関する知識と料理スキル取得は、長い目で見たときの自己投資の一環で、投資リターンが非常に大きくなります。(病院や薬が不要、人生を楽しめる、など)
私も当ブログで、みなさんのお役に立てるような情報やレシピを提供したいと思います。
なお、環境・サステイナビリティ―の視点からも、プラントベースの食生活は、全部ではなくとも一部取り入れていくトレンドは今後も続いていくと信じています。
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